待ち合わせ

「待ち合わせ」は1991年11月に発売された2ndアルバム「名前をつけてやる」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:スピッツ

軽快な印象のこの曲、どんな内容が歌われているのか早速読んで行きたいと思います。

だけど君は来ない待ち合わせの星へ 約束した場所へ

最後のキス そっと ふれた頬

シャボン玉の中でぬくもり確かめた 震え押さえながら

飾りのない恋 ドロドロの

「シャボン玉」は春の季語です。そして、マサムネさんの春はイコール”恋”の意味も持ちます。恋をした春、ということですね。また、シャボン玉のようにすぐに割れてしまうこともイメージしているのかもしれません。

そして、それはどんな恋かというと「震え押さえながら」「飾りのない」「ドロドロの」とありますので、初々しくて、まっすぐで、未熟で、感情を拗らせたものであったようです。

「ぬくもり確かめた」プラトニックではなく性的な関係も持ち、「震え押さえながら」はその時の様子を表しているのでしょうか。また、孤独な心に温かさを与えてくれる、恋の良さを感じるものであったことも表しているように思います。

そんな恋の終わりの「最後のキス」大切に「そっと触れた頬」を思い出しながら、「待ち合わせの星」「約束した場所」で待つ僕の元に「君は来ない」と歌っています。

「待ち合わせの星」といえば、七夕伝説がまず頭に浮かびますが、進んで読んで行きます。

待ちわびた僕の涙 落ちてにじむ様を見ていた

そして君は来ない待ち合わせの星へ 約束した場所へ

帰らぬ日々 澄んだ水の中に

「涙」が出ましたので、やはりこれは七夕伝説と関係があると連想できます。七夕に降る雨、”催涙雨”です。織姫と彦星が雨により天の川が増水してしまい逢うことができず、その悲しみから流す涙が地上に雨として降るものです。七夕の夜、雨が降り地面ににじんでいくのを、自分の涙が降っているのだと眺めている情景が思い浮かばれます。実際に、この主人公は涙を流しているのかもしれません。

春に恋した彼女はやっては来ず、あの日々はもう戻っては来ませんでした。

「澄んだ水の中に」沈んでいく、沈める、などと続くのでしょうか。七夕で「澄んだ水」から連想するのは、”天の川”、”催涙雨”、また、七夕の大本である、日本古来の行事”棚機”(乙女が清らかな川のほとりの建物にこもって神様のために着物を織る)の”清らかな川”、そのあたりですね。先に出てきた、「シャボン玉」「ドロドロ」と反対のイメージを持つ言葉であることも面白く感じます。ドロドロだったものが綺麗に浄水されていくような印象も持ちますね。終わった恋を自分なりに昇華させたという意味でしょうか。

待ちわびた僕の涙 落ちてにじむ様を見ていた

そして君は来ない 百万年前に約束した場所へ

帰らぬ日々 澄んだ水の中に 

 「百年前に約束した」というのはどういうことでしょう。

これは、星が宇宙に誕生するまでにかかる時間がちょうど百万年くらいと言われていますので、七夕の星のベガとアルタイルが出来る時にそこで会おうと約束したということでしょう。もちろん実際の話ではなく、七夕伝説を連想させるフレーズを上手に使っています。

 

未熟ながら、孤独を忘れぬくもりを確かめあうような素晴らしい体験であった、おそらく初めての恋。それは失敗に終わり、また元に戻りたいと願うけれども叶えられず、そのことを悲しみながら、悔やみながら思い出している。そして、今、終わった恋に自分の中で決着をつけました。

彦星と織姫が一年に一度だけ逢うことが許された七夕の夜に最後の望みをかけていた、そんないじらしい印象も持ちます。

 

若い男性の心のうちを七夕伝説を連想させる言葉を使い巧みに表現した切なくも愛おしい歌詞でした。明るく軽快な曲調とのギャップも面白いですね。