ニノウデの世界

「ニノウデの世界」は1991年3月発売の1stアルバム「スピッツ」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:スピッツ

冷たくって柔らかな

二人でカギかけた小さな世界

かすかに伝わってきて

縮んで伸びてフワリ飛んでった

女性のニノウデって触ると冷たいんですよね、そして柔らかい。

「小さな世界」はタイトルの「ニノウデの世界」ですが、「二人でカギかけた」と”二人きりの秘密の世界”と表現しているところがロマンティックです。

マサムネさん曰く、”直接的なものよりもニノウデのようなものに色気を感じる”、ということで、この”秘密の世界”はエロティックな世界を意味しています。

縮んで伸びて浮き上がるような気持ちになる、とは男性の絶頂期の表現でしょうね。

「かすかに伝わってきて」というところ、どこか初々しいぎこちなさを感じませんか。緊張が伝わるような。

タンタンタン それは僕を乗せて飛んでった

タンタンタン それは僕を乗せて飛んでった

続くこちらも、同じ意味です。可愛らしいです。

ああ君の そのニノウデに

寂しく意地悪なきのうを見てた

窓から顔出して

笑ってばかりいたら こうなった

人間は常に孤独でそれを埋めるものを求めていますから、「寂しく意地悪なきのうを見てた」と昨日の心境を表すことで、二人一緒の今この瞬間の幸せがより強調されているように感じます。「幸せです!」というよりもじんわりしっかり伝わってくる、マサムネさんのこういう表現はとてもいいなと思います。

「窓」とは心の窓でしょう。自分の内側にこもらずに外界に向かって笑顔でいたら、魅力的な女性と知り合えたようです。

タンタンタン そして僕はすぐに落っこちた

タンタンタン そして僕はすぐに落っこちた

「すぐに落っこちた」とは、たちまちに恋に落ちたということでしょうね。

「すぐに」というところにも、若くて経験の浅い男性という印象を持ちます。

歌詞としては、飛んでった、と、落っこちた、で対比させているのが面白いです。

しがみついてただけの あの日

おなかの産毛に口づけたのも

思い出してはここで ひとり

煙の声だけ吸い込みながら

 「あの日」とは「ニノウデの世界」の日ですが、「しがみついてただけ」とやはりこの主人公は経験が浅く、「おなかの産毛に口づけた」ような細かいことまで鮮明に思い出すくらいに女性とその日の出来事に夢中で、このことからもとても初々しい男性なのだとわかります。もしかしたら、女性は大人で経験豊富なのかもしれません。

「煙の声」とは”たばこを吸っている人の話している声”かと思います。おそらく、女性と知り合った場所で、また会えることを期待して長い間ひとりで待っているのではないでしょうか。夢のような時間を思い出し幸せに浸りながら...

なんにもないよ 見わたして

ボーッとしてたら何故 固まった

けれど、残念なことに、女性は消えてしまったようです。どこを見ても見当たりません。二度と再会することは出来ず、または、自分の元には戻ってくれず、あんなに満ちた幸せな気分だったのに…。呆然として、そのショックで「固まった」身体が動かない状態になってしまいました。

タンタンタン 石の僕は空を切り取った

タンタンタン 石の僕は空を切り取った

「空を切り取った」は「そら」と読んでいますが、これは「空(クウ)を切る」のことでしょう。”目標を当てそこなう、空振りになる”という意味です。

自身が石のように固まって鋭いことと、女性を得られなかった虚しさを並べて描いているのが面白いです。

 

「ニノウデの世界」は、ある場所で女性と出会ってたちまちに恋に落ちて関係を持ち、とても幸せでそれが続くと思っていたのに、むなしくもひとりになってしまった、初々しくちょっとかわいそうな、でも次のチャンスにはもう少しうまくやれそうなそんな雰囲気を感じる、若い男性の素直な心が表現された可愛らしい曲でした。

 

何事も経験、ですね。