オーバードライブ

「オーバードライブ」は1992年9月に発売された3rdアルバム「惑星のかけら」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:スピッツ

この曲のタイトル「オーバードライブ」とは、音楽用語として使う場合、アンプによって作り出される「エレキギターの歪んだ音」を意味します。

1940年頃から、アンプに過負荷をかけて歪ませたエレキギターの音を使うミュージシャンが現れて人気を博し、すぐに多くのミュージシャンに使用されるようになりました。

その後、この歪みを作り出すためのアンプやエフェクターが制作され、現在でも用いられています。

こっちへおいでよ かかっておいでよ

美人じゃないけど 君に決めたのさ

「歪んだエレキギターの音」というのは、一般的な「美しい音色」とはかけ離れ、聞き苦しい音だとも言えます。

従って、ここで歌われる「美人じゃないけど」というのは、「音色が美しくはないけれど」という意味になるでしょう。

もちろん、それはロックでは非常に格好のいいものであり、当人は大変好んでいるのですが、当時の価値観(※後述します)の中において「美しくはないけれど」と敢えて言っているのだと思います。

 

続く「君」とは、歪んだエレキギターの音でもあるし、その音を使った演奏でもあるし、その演奏をするギタリストでもあるし、そのギタリストを有するロックバンドでもあるし、そのロックバンドのために作曲をすることでもあるでしょう。

そんなロック音楽をすることを「決めた」と宣言しています。

ちゃっかり楽しもうよ 闇のルールで消される前に

歌おう この世界中に響くような 獣の声で

このアルバムが出された92年頃、ポップな音楽の人気が高まっていました。

それは、スピッツがこの次のアルバム「クリスピー!」に売れ線のポップなスタイルを取り入れたことからもわかるでしょう。

ですから、「闇のルールで消される」とは、「歪んだエレキギター音を使うようなロック音楽が商業的なルールで消されること」だと考えられます。

そんな未来が見えるけれども、今は「ちゃっかり楽しもうよ」と歌います。

「歌おう」「獣の声」とは言うまでもなく、歪んだエレキギターの音で演奏することですね。

いつまでたっても 終わりはしないのか?

だいだい色の太陽 答は全部その中に

今ゆっくりとろけそうな熱でもって僕に微笑んで

「これが終わるかどうかの答は太陽の中にある」

太陽は1億年に1%明るくなっています。

今から5億年経つと地球は太陽の熱のために海が蒸発して生き物が住めなくなります。

そして50億年後には太陽が大きく膨らんで地球をのみこんでしまうと言われています。

(※諸説あります)

太陽の熱はどんどん高温になり、その熱で地球上の生物は終わりを迎え、そしてのみこまれる...それが「答」です。

だいだい色の太陽 答は全部その中に

今ゆっくりとろけそうな熱でもって僕に微笑んで

しかし、今はまだそれほどに高温でもないし、太陽の熱のおかげで生きていられます。

まだ、生きていられる今の内は、「ゆっくり」と「とろけそうな熱で」「微笑んで」いて。

出来るだけ長く、緩やかに、見守っていて欲しい。

いつかは終わりを迎えることを覚悟しつつ、願望を語るかのような歌詞です。

 

全て読んでみると、この曲を作った当時、マサムネさんは音楽の方向性にかなり悩んでいたのかもしれないという感想を持ちました。

 

歪んだエレキギター音を使うようなロックな音楽をやりたい。

しかし、それは時代に受け入れられないし、いつか消されてしまう不安がある。

その前に商業ベースで受け入れられるポップな音楽をするべきなのかもしれない、と。

 

それがこの「オーバードライブ」の歌詞に表れているような気がしました。

 

また、この曲は演奏全体を通して歪んだエレキギターの音が前面に押し出されています。

加えて、奴隷音楽から始まり長く続いているサンバの情熱的な音楽が間奏に組み込まれていることもとても印象的です。

これらが、歌詞を補完する役割を担っているように感じました。