裸のままで

「裸のままで」は1993年9月に発売された4thアルバム「Crispy!」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:笹路正徳スピッツ

ひとりの夜くちびる噛んで 氷の部屋を飛び出したのさ

人は誰もが寂しがりやのサルだって 今わかったよ

「ひとりで暗い中気持ちをぐっと堪えていたけれど、耐え切れずに氷のように冷え切った冷たい部屋を飛び出した。自分も含めて人間というのは寂しがりやで、それを理性で抑えることが出来ない動物のようであると、この状況になってわかった」と歌っています。

最初の行は心の状態の比喩表現で、「夜」は闇、「部屋」は自分の内側の比喩かと思います。暗く閉じこもった中での寂しい気持ちをどうしても抑えられなかったようです。

はがれはじめた嘘について レールの上で考えたのさ

小さなズレさえ許されない掟なのに めぐり会えたよ

寂しさに耐えきれず心の部屋を飛び出したことで「はがれはじめた嘘」、これは、自分で自分についていた嘘・ごまかしと言えるでしょう。

それについて「レールの上」で考えました。そして、それが「嘘」であることを自覚します。

さらに、定められた「掟」があるレールですから、あらかじめ決められたもの、ここでは、例えば人生や、進路などでしょうか、そこに乗っているのに、後に出てくる「君」と「めぐり会えた」のだということに彼は気がつきます。すごいことですよね。

そして時は ゆっくり流れだす

二人ここにいる 裸のままで

どんなに遠く 離れていたって 君を見つめてる

ほら 早く!早く!気づいておくれよ

それに気がつき、自分についていた嘘・ごまかしを取り払い正直になり、巡りあえた奇跡を思い、心の内側から抜け出すと、自分の中で停滞していた時間はゆっくりと流れ出しました。

そこには、囚われていた様々なしがらみ、問題、プライドなどが取り払われ、「裸のまま」の二人が、ただ、存在しています。

とすると、たとえ二人の間に距離という制約があったとしても、何にも囚われていないので、君のことを見つめていることに何ら変わりはないのです。

そして、そのことに君も早く気づいておくれ、と歌います。

地下道に響く神の声を 麻酔銃片手に追いかけた

無くしたすべてを取り戻すのさ 地の底に迷い込んでも

やがて光は 妖しく照らしだす

二人歩いてる 道はなくても

どんなに深く霧に包まれても 君を見つめてる

ほら 早く!早く!気づいておくれよ 

「神の光に照らされる」という言葉があります。嘘や隠し事をして生き闇を愛することもできるが、神の目には全てが裸であるのだから、その光の下で自分を直視し正直に生きようという考え方です。その恩恵は様々ですが、いくつかの宗教で見られる考え方のようです。日本ではお天道様が見ているなどというのが馴染みがあるかもしれません。

ここで歌われている内容はそれをモチーフとしているように感じます。

「地下道」は闇ですから、そこで神を「麻酔銃」で捕まえて(決して討取るのではありません)、今まで闇の中で失ってしまったものを取り戻すんだ。たとえそのまま地の底に迷い込んでしまっても。強い決意が感じられますね。

 

次に出てくる「光」は先ほどの神の光のことでしょう。「妖しく」とは不思議、神秘的ということですから、そこからもそれがわかると思います。

失われたものを自分の中に取り返し、光に照らされ正直になれば、決められた道がなくても二人は滞ることなくとにかく前へと進みます。そして、その進む先に深い霧がかかり、君のことが見えなくなるということがあっても、迷うことなく君を見つめている、これにも変わりはないのです。

そして時は ゆっくり流れだす

二人ここにいる 裸のままで

やがて光は 妖しく照らしだす

二人歩いてる 道はなくても

どんなに遠く 離れていたって 君を愛してる

ほら 早く!早く!気づいておくれよ

最後に、この曲のキーワードと思われる部分が繰り返して歌われます。

全てを読んでからこの部分を聴くと感じるものがありました。

さらに、「君を見つめている」は「君を愛している」と言葉を変え、自分の気持ちをさらに素直に表現しているように感じます。この変化が歌詞にさらなる深みを与えているように思います。

裸のままで

裸のままで

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