ドルフィン・ラヴ

「ドルフィン・ラヴ」は1993年9月に発売された4thアルバム「Crispy!」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:笹路正徳スピッツ

*最後の部分に追記しました。

イルカの君は 僕に冷たい

イルカの君は 僕に冷たい

いつも oh year 氷みたい

ぶつかって 逃げ込め 火の中へ

イルカはとても人気者で、そして、群れて生活します。

そんな「イルカ」にまるで氷みたいにとことん冷たくされますが、そこに我慢して迎合するのではなくぶつかって、そして、火の中へ逃げ込め、と歌っています。

逃げ込む場所ならば安全な場所のはずですが、そこが火の中という危ない場所なのが不思議です。

群れるイルカに受け入れてもらおうとするのではなく、あえてひとり危険性の高いことに挑む方が自分にとっては安全ということのようです。

トカゲのしっぽ まだまだ死ねない

トカゲのしっぽ まだまだ死ねない

あえて oh year 何をしようかな

別れたその日の 恋だから

トカゲが危険が迫るとしっぽを自ら切り捨てて逃げるのはご存じでしょう。

上の段ではイルカに迎合せずぶつかっていきましたから、自らにとって危険なものに迎合せずに逃げたと考えれば、危険なものから逃げ出したことを「別れた」と表現しているように思います。

上の段からのつながりを見ると、ここでもしっぽを切り捨て逃げた先は決して楽な場所ではないことが想像されます。

そのうえでの「あえて」とすると、どうやら楽な場所ではなくても、なんでも挑戦できる心の自由があるようです。反対に言えば、危険は心の自由が制限されている場所となります。イルカの群れも同じですね。

そして、別れた先には「恋」があります。恋のために何をしようかなと歌っています。群れの中、危険の中には「恋」はなかったのですね。ここで、この曲の「恋」とは一般的な恋愛のことではなく、心が高揚する対象のことを指していると予想できるのではないかと思います。

朝もやに溶け出す 三日月追いかける

傷跡も気にせずにさ 自由に泳げたらいいな

朝もやに溶け出す、という表現がとても美しく大好きです。

月は朝日が昇っても割合見えるものですが、三日月だけは細いのでどんどんと見えなくなってしまいます。

消えていくものを追いかける、それは、これまでの歌詞から見ると、あえてする挑戦であり、追いかけるものは「恋」でしょう。

また、明るいところで消されていく自分自身を投影しているのかもしれません。

イルカの君は 僕に冷たい

イルカの君は 僕に冷たい

いつも oh year 氷みたい

ぶつかって 逃げ込め 火の中へ

群れから離れたら 化石を集めよう

傷跡も気にせずにさ 自由に泳げたらいいな

「化石」は、先ほどの「消えていく三日月」と同じ意味で使われているようです。

恋している大好きなもの、もう古くなってしまったもの、この世から消え去ってしまったもの、消えそうなものを、群れから離れてひとり自由になったら集めよう。

そして、それが消されていった自分を取り戻す行為に繋がるのかもしれません。

 

続く歌詞を読むと、自由に好きなことが出来るのですが、そこには不安もあるようです。

今まで受け入れてもらえない群れの中で深く傷ついてきて、群れを離れてもその傷跡の記憶に怯え自由にふるまえないかもしれないという不安です。

傷ついた記憶はなかなかなもので、忘れ去ろうとしてもとても難しいところがあります。だからと言って、もう傷つかないように自らを偽って生きることは、さらに深く自分を傷つけることにつながる、だから、とても怖いけれど、勇気を出して群れから離れ自らの道を行くのです。

そういった不安が上手く表現されているなと思います。

イルカの君は 僕に冷たい

イルカの君は 僕に冷たい

いつも oh year 氷みたい

ぶつかって 逃げ込め 火の中へ 

(追記ここから)

整理してまとめますと次のようになるでしょうか。

「自分を認めてくれない群れの中で自分を殺してしまうよりも、抜け出して、たとえそこが苦しい場所であったとしても、そこで本当に大好きだと思えることをしよう。それが今の世の中では化石と言われるようなものであったとしても、自由に周りを気にしないで。認められなかった傷を抱えて本当に自由にできるかは不安だけれど。」

(追記ここまで)

全ての歌詞を読み終わり、私は、この曲にメジャーシーンという場所で受け入れられずに大変に傷ついたマサムネさんの心を感じました。

恋=大好きなもの=化石のように古いものは、メジャーで受け入れられなかった自分たちの音楽、良いと思っている音楽。

デビュー前にはあれほど人気があったのに、メジャーシーンでは何をやってもほとんど受け入れられず、明るさの中で消えていく三日月のように自分が消えていき、受け入れられるためにこのアルバム「Crispy!」では当時人気のポップスを取り入れようと決意しながらも、それでもまだもがいている非常に強い心の葛藤が見えてくるような気がしました。

ドルフィン・ラヴ

ドルフィン・ラヴ

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