たまご

 「たまご」は1994年9月発売の5thアルバム「空の飛び方」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:笹路正徳スピッツ

*後半部分を大幅に書きかえました。

からめた小指で 誰も知らない約束

たまごの中には いつか生まれだすヒヨコ

君と僕のおかしな秘密

「からめた小指で約束」と聞くと「指切り」を思い出します。

「指切り」は、元々は「心中立」から来ているのだそうです。

「心中立」とは、男女が愛情の不変を誓い合う証拠を立てること。

「心中立」にはいろいろな方法がありますが、その中で遊女が客に対して行ったものを「指切り」と言い、今でも固い約束をする際に小指を結び切る動作や言葉として残っています。

そして、「君と僕の秘密」とありますので、この曲は何か恋愛にまつわるものかなと予想をつけて、続きを読んでみます。

バナナ浮かぶ夜は 涙こらえて

下手なピンボールだって 味方につけた

削られるたびに 憧れたピストルが

ハデに鳴り響く

何かとても辛いことがあった夜のこと。

辛さで心が削られるたびにピストルを撃つように反撃することに憧れるのですが、現実にはそんなことは出来ず、涙をぐっとこらえたまま夜を迎えています。

そして、遊び場でピンボールを思いきり打って、溜まった鬱憤を晴らしています。

上手だから、楽しいから、ピンボールをしているわけではなく、それはただ鬱憤を晴らす道具に過ぎないことが、「下手な」「味方につけた」という歌詞に表現されているように思います。

ピンボールを打つことを「憧れたピストル」を撃つ行為に代替しているのか、もしくは、何かピストルを撃つように大騒ぎをしているのかもしれません。

さかずきのテキーラ 願いをこめて

死にかけたマシンで はじき出された

君はこの場所で ボロぎれみたいな

僕を抱きよせた 

次も、まるで自傷行為のようです。

ショットグラスに注いだ度数の高いテキーラを一気飲みしています。

何の願いを込めているのでしょう、現状を打開したいのか、我を忘れ去りたいのか。

おそらく何杯も飲んだのですね、死にかけたように泥酔して、身も心もボロボロです。

そんな状態ではじき出されたのは、遊び場からということでしょうか、または、鬱憤を晴らしたかったのにそれもできなかったという意味でしょうか。

辛く情けない状況ですが、ここで「君」が登場します。

ボロきれみたいな、なんの価値もないような僕を、君はその場で優しくそっと抱きよせてくれました。

からめた小指で 誰も知らない約束

たまごの中には いつか生まれだすヒヨコ

君と僕の不思議な秘密

そして、「からめた小指」と続き、「誰も知らない」のは二人きりだからということで、二人だけの秘密を共有し、契りを立てたことがうかがえます。

君はこの場所で ボロぎれみたいな

僕を抱きよせた

からめた小指で 誰も知らない約束

たまごの中には いつか生まれだすヒヨコ

はじめて感じた宇宙・タマシイの事実

たまごの中には いつか生まれ出すヒヨコ

君と僕のよくある...

これまで意味が解らなかった「たまご」と「ヒヨコ」について、ここでようやくその鍵が登場しました。

「はじめて感じた宇宙・タマシイの事実」です。

君と結ばれることで「宇宙・タマシイの事実」を感じた僕。

「宇宙」も「タマシイ」も突き詰めると果たして何なのかよくわからない不思議なものです。

「宇宙」が全てをつくり出したとされ、人間もそのうちの一つですが、人間の中にある「タマシイ」とはなんでしょうか。確かに在るのに実体はない。不思議です。しかし、その存在を「事実」として感じられたんですね。

そしてそれは、「たまごの中にはいつか生まれ出すヒヨコ」が存在することと同義だとしています。これも宇宙から全てが生まれたことに続く、生命の自然の神秘です。

少し難しい話になってきましたが、豊かに性的な関係を持つことによって、それほどまでに圧倒的な神秘さを実感をもって感じられました。

そんな大きな事実の前に、それまで悩んでいたことなどなんと小さなものであるのかと感じられたのかもしれません。どうでも良くなってしまう。

 

それが、「おかしな」「不思議な」二人の秘密で、そして、「よくある...」。

おかしくて不思議な二人だけの秘密、でもこれってよくあることなんだ、ということでしょうか。

約束を交わせるほどの相手とあたたかく結ばれた時には、誰しもがそんな風に感じて小さなことなどどうでも良くなるものなのだと。

最後が「秘密」でないのは、よくあるありふれたことならそれは秘密ではなくなるということでしょうか。

恋愛から生じる神秘を表現する素敵な歌詞ですね。

 

さて、最後に、ピンボールのくだりの言葉遊びについて触れたいと思います。

これはあくまで私の推測ですが、「バナナ(三日月)」「ピンボール」「ピストル(を撃つ)」は全て男性自身と続く君との行為を暗示しているように思いましたが、いかがでしょう。ちょっと無理があるかな。

この言葉遊びが、曲全体のユーモアと統一感を高めるように感じ、もしそうであったとしたらとても楽しいし、こっそり忍ばせてあるところがマサムネさんの歌詞の面白さだなと思います。

たまご

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