青い車

青い車」は1994年9月発売の5thアルバム「空の飛び方」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗、編曲:土方隆行スピッツ笹路正徳

冷えた僕の手が 君の首すじに咬みついてはじけた朝

永遠に続くような掟に飽きたら

シャツを着替えて出かけよう

「君」は僕に力を与えてくれる存在です。

僕の手が冷えているというのは、身体が冷えているということではなく、心が冷えています。

ある朝、君の首筋に手を添えて「咬みついてはじける」ことで、君から熱=力をもらいました。

スピッツの曲、特にこのアルバム「空の飛び方」において、心が通い合っている相手と性的なつながりを持つことは、相手を受け入れ、相手の中に入るという大切で宇宙的な事象であり、それにより最大の力を受けるとしていますので、この「咬みついてはじける」もその意味を持つと考えます。

それにより、僕は、「永遠に続くような掟」にうんざりしていることを発見・自覚し、新しく着替えて出かけよう、と思い立ちます。

「シャツを着替える」とは、纏っている古いものを脱ぎ捨て、新しい自分になることを意味しています。

君の青い車で海へ行こう おいてきた何かを見に行こう

もう何も恐れないよ

そして輪廻の果てへ飛び降りよう 終わりなき夢に落ちて行こう

今 変わって行くよ

「君の車」で行くのは、君が僕を支えてくれているということ、その車が「青い」のは、純粋で真っすぐな気持ちという意味を込めているように思います。

海へ行くということは、つまり、地球上の生命が生まれた場所に行くということで、置いてきてしまったのは、「生きるとは何であるかという認識」と言えるでしょうか。

置いてきてしまった、忘れてしまったために、人生に恐れを抱き、それゆえに「掟」に縛られたような状態だということを僕は君から得た力により自覚しました。

恐れるあまり、送りたい人生は生まれ変わった時に先送りして、自分の持つ夢に対しても簡単に諦めてしまうということを繰り返していました。

そして、それはこれからも変わらず永遠の掟として続いていくように感じられ、僕の心はすっかり冷めていました。

しかし、海からもたらされた気づきによって、たとえ下降することのように思えても、思いきって「輪廻の果てに飛び下りよう」と人生を今生きりと捉え、「終わりなき夢に落ちて行こう」と夢を叶え続けようとする、そうした風に変わろうと僕は決意します。

生きるということは 木々も水も火も同じことだと気づいたよ

愛で汚された ちゃちな飾りほど 美しく見える光

木々も水も火も、人間と同じく海から生まれました。

それらは、生まれ、存在し、消滅し、そして、次の存在へと命をつなぎます。

人間もこれらから生きるために必要なものを与えられ、命を繋げています。

それは古来から脈々と続くもので、淡々として途切れることのない大きな営みです。

しかし、人間は、それらが意味する「生きる」以外に多くのものを持っています。

例えば「愛」と呼ばれるもの。

ただ存在しているという以外に、そうしたものに飾られて光輝くこと、愛を用いて言えば「多くの人に愛される」ことが、美しく素晴らしいとされています。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

人間の存在も、木々や水や火と同じなのではないか。

ただそこに自然に存在しているということ、それこそが大切なことなのではないか。

それが、海からもたらされた気づきです。

君の青い車で海へ行こう おいてきた何かを見に行こう

もう何も恐れないよ

つまらない宝物を眺めよう 偽物のかけらにキスしよう

今 変わっていくよ

自分がこれまで大事だと思っていた本当はつまらないもの、そして、それを大事にすることで作り出していた偽物の自分。

そういったものをしっかりと自覚して、それも自分の一部であると一旦受け止めて、その上で変わっていく。

これまでの自分も否定はせずに認め、しかし、これからは自分のありのまま自然に生きることを決意しました。

潮のにおいがしみこんだ 真夏の風を吸いこめば

心の落描きも踊り出すかもね

生命の大元である海の香りを胸に大きく吸い込み、それに身体が満たされることで、これからは、本心の思うままに心の中だけに描いていたものもまるで命を与えられて踊り出すかのように感じられるでしょう。

真夏であるとしたところに、その思いに対する熱を感じます。

君の青い車で海へ行こう おいてきた何かを見にいこう

もう何も恐れないよ

そして輪廻の果てへ飛び下りよう 終わりなき夢に落ちて行こう

今 変わっていくよ

今 変わっていくよ

青い車」は、生きる意味を見失い心が冷え切ってしまっていた僕が、その意味を再確認して、僕のままで生き直そうする物語でした。

この曲ではそれが、これまでの自分を否定することなく、全てを受け止めて認め、その上でなされようとしています。

それが、この曲の本当に素晴らしいところだと私は感じています。

なぜなら、自分を否定せずに認めることが出来るということは人生において大変な強さになるからです。

これまでと違う日々は、例え大変であったとしても、きっと心は冷えずに熱を保ち続け、生きている実感を得ながら送る、僕にとって素晴らしいものとなるでしょう。

青い車

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  • provided courtesy of iTunes
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