ルナルナ

「ルナルナ」は1995年9月発売の6thアルバム「ハチミツ」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗 編曲:笹路正徳スピッツ

忘れられない小さな痛み 孤独の力で泳ぎきり

かすみの向こうに すぐに消えそうな白い花

思い疲れて最後はここで 何も知らない蜂になれる

瞳のアナーキーねじれ出す時 君がいる

誰にでも失敗や挫折の経験があり、それが心のどこかに未だ疼く小さな傷となって残っています。

その傷は他人が消すことはできないもので、一人で抱えながら、また同じ失敗や挫折に怯えつつも、何とか進んで行くしかありません。

そんな大変な今日を終えて、ふと気がつくと、疲れてかすんだ目に今にも消えそうにぼんやりとした白い花のようなものが映ります。

一日中、様々なことを考え脳はすっかり疲弊していますが、しかし、その白い花の前ではただの生き物としての蜂になることが出来ます。

今日一日の全てを投げ捨てて、全く素の自分に戻ることが出来ます。

「ルナルナ」というタイトルから、「白い花」は夜の月の光に白く照らされた花を意味し、また、「蜂が花を刺す」ことは男女の交わりの暗喩となっています。

このように暗喩される時、「花」は女性、「蜂」は男性を意味します。

そうした行為の末に、疲れて無秩序で混沌としている状態(アナーキー)だった自分の脳内がねじれ出し、やがて秩序を取り戻すと、瞳もはっきりとして、先ほどまではぼんやりとしか見えなかった「白い花」が君であることが見えてきます。

一日を終えて、君との交わりをもってようやく自分自身を取り戻すことが出来るのです。

二人で絡まって 夢からこぼれても まだ飛べるよ

新しいときめきを 丸ごと盗むまで ルナルナ

それは、君の存在があるからこそ可能なこと。

二人で心も身体も絡まり合えば、追いかけていた夢から例えこぼれてしまっても、萎縮することも塞ぎこむこともせず、自由な心でまたそれを目指すことが出来ます。

こぼれてしまった夢は諦めたとしても、新しくまた心ときめく夢を全て自分のものにするまで、それを続けていくことが出来ます。

そんなふうに夜に自分を回復させ力を与えてくれる君のことを「月(ルナ)」のように感じています。

羊の夜をビールで洗う 冷たい壁にもたれてるよ

ちゃかしてるスプーキー みだらで甘い 悪の歌

 「羊の夜」とは、眠れない時に羊を数えることから、寝付くことが出来ないことを意味しています。

考えすぎて眠れないために、その考えをビールによって洗い流し忘れようとしますが、それでは足りず、考えはどんどんと悪い方向へ進み、心の状態を映すようにもたれかかった壁も冷たく感じられます。

そんな怖がり(スプーキー)な自分をちゃかすように、君は、みだら(淫猥とも言い換えられ、情欲を刺激する下品でみだらななさまを表します)で甘い、大真面目に考えすぎている自分とは正反対な「悪」の歌を歌います。

本当に歌っているわけではなくて、そういった行動を取るわけですね。

このまま止めないで ざわめき避けないで ほら眩しい

不思議な出来事は 君へと続いてる ルナルナ

思い詰めていた自分にとって、それはビールに酔うことでもなし得なかった心を溶かすことを可能にし、解放を与えてくれます。

とても素晴らしいことなので、このまま止めないで欲しいと感じます。

一つのことだけを狭く考えていた頭を切り開くようにしてざわめきを流し入れ、それを受け入れると、その先には月の光がまぶしく輝いています。

自分ひとりではどうにも変えられなかったことが、自分にとって月である君によって不思議なくらいに変化していきます。

このようにやはり夜の君の存在が自分を助けてくれるのです。

二人で絡まって 夢からこぼれても まだ飛べるよ

新しいときめきを 丸ごと盗むまで ルナルナ

夢を追うことや、自分の過去の痛みと付き合っていくことは、自分一人にしか行うことが出来ません。

それを他人にしてもらおうというのは不可能ですし、もしそうしようとするならばそれは「依存」と言ってもよく、決して健康的な状態ではありません。

しかし、それをたった一人孤独に行う上で、ある存在に力を与えられサポートしてもらうことは可能です。

サポートによって自分の幹を太くして、力強く進んで行くことが出来ます。

そういったものは様々にありますが、一番の力となってくれるのは、この曲では、一日の終わりの夜に力を与えてくれる素晴らしい恋人だとしています。

涙がキラリ☆」でも、心と身体は切り離せないと書きましたが、やはりその価値観はこの曲にも表されていました。さらにより具体的に表現されたと言ってもよいでしょうか。

また、「ハチミツ」に表現されていた、素晴らしい恋人による心の解放もテーマとなっています。

「ルナルナ」は、過去の傷と向き合い恐れずに自由に夢を追うにあたり、いかに恋人の存在が大切なものであるかを、恋人を夜の月に例えて表現した素敵な作品でした。

ルナルナ

ルナルナ

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