ハチミツ

「ハチミツ」は、1995年9月発売の6thアルバム「ハチミツ」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗 編曲:笹路正徳スピッツ

一人空しくビスケットの しけってる日々を経て

出会った君が初めての 心さらけ出せる

一人きりの空しい日々は、しけったビスケットのようでした。

ビスケットが湿気ることと、人がしけった状態、つまり、陰気でさっぱりしない様子をかけていてちょっと面白い表現ですね。

*ビスケットは後から出てくるピーコートと韻を踏んでもいます。

一人きりで自分が空っぽに感じられるような虚しく陰気な日々を過ごした後に、僕は君に出会い恋に落ちます。

素敵な恋人 ハチミツ溶かしてゆく

こごえる仔犬を 暖めて

懐かしい遊びが甦るのは

灯りの場所まで 綱渡りしたから

「こごえる仔犬」とは僕の状態のことで、君はこれまでの日々によって冷たく小さく固くなっていた僕を優しく暖めてくれて、「ハチミツ」を溶かしていきます。

ハチミツは寒いと固まる性質を持ちますので、この「ハチミツ」は「僕の心」だと読めるでしょう。

このように優しく温かさを感じる「素敵な恋人」のおかげで、僕は初めて安心して心をさらけだすことができました。

これまで固く閉ざされていた僕の心は、まるでハチミツが溶けるようにのびのびと解放されていきます。

さて、最初にあった辛い日々を過ごしていた僕は、灯りを求めて、恐れを知らない子供が綱渡りを渡るような思いきった行動を取ったようです。

「灯りの場所まで子供のような心で綱渡りしたために、幼い頃の遊びを思い出す」としているのは、陰鬱とした日々から抜け出したくて自分から思いきって行動を起こし、僕の灯りとなってくれる君に向かって進んだこと、つまり、ただ幸運が降ってくるのを待っていただけではなく、リスクを恐れずに自らで君を掴み取りに行ったということを表現しているのでしょう。

凍える仔犬のように弱っていたのですから、かなりの勇気だったと思います。

そして、「懐かしい遊びが甦る」の部分には、灯りである君といることで幼い頃のような素直で明るい気持ちになれるという意味も込められているように思います。

ラクタばかり ピーコートの ポケットにしのばせて

意地っ張り シャイな女の子 僕をにらみつける

君は意地っ張りで思ったことは押し通すという、どちらかと言うと気の強いタイプなのですが、しかし、同時にシャイな女の子なので、ハッキリと面と向かって意見を言うことが出来ません。

それで、ガラクタのようなくだらないものを隠し持っている僕に対して一言あるのですが、そんな性格なのでただにらみつけるんですね。

ここもとても面白い表現で、君のキャラクターが生き生きと伝わってくるようです。

おかしな恋人 ハチミツ溶かしてゆく

蝶々結びを ほどくように

珍しい宝石が 拾えないなら

二人のかけらで 間に合わせてしまえ

僕は自分を輝かせてくれる珍しい宝石がなかなか拾えないので、代わりにガラクタを集めて隠し持っていました。

君は、それは違う、と僕をにらみつけることで強く伝えてきました。

そんな「おかしな恋人」である君によって、僕は抱えていた思い込みから解放されていきます。

もし宝石を拾うことが出来なくてもガラクタなど必要なく、自分たちのかけらで十分なんだと気付きます。

つまり、これまで自分は空っぽで無価値だと考えていたので、他人よりもさらに自分を輝かせてくれるであろう「珍しい」宝石を持つことが必要で、でもそれが拾えないから仕方なくガラクタを集めていたのですが、そうではなくて、本当は僕は自分自身が輝ける存在なのだと君によって知ることができたのです。

「あなたそのものに価値がある」と君は僕に自信を与えてくれたのですね。

人と比べて特別に光り輝くことが出来なくても、自分の輝きだけで十分に価値があり、そんな価値のある自分をさらに輝かせて行けばいいのだと悟ります。

そして、それは君がいなくては気が付けなかったことだし、そんな風に自信を持つこともできなかった、だから、「二人のかけら」と言っているように思います。

また、君と二人一緒にいることでさらに自信を持って輝けることも意味しているのでしょう。

このように、君はまるで蝶々結びをするっと解くような自然な滑らかさで、自分を縛りつけていた思い込みから僕を解放してくれました。

素敵な恋人 ハチミツ溶かしてゆく

灯りの場所まで 綱渡りしたから

最後に、素晴らしい恋人の存在によって心が解放されること、灯りを求めて自ら綱渡りをしたことが繰り返されます。

私は、この繰り返しがこの曲のテーマなのかもしれないなと思いました。

  • 素晴らしい恋人の存在によって心が解放され、自信を持つことが出来ること。
  • 良い変化をもたらすためには恐れずに自ら行動を起こすことが大切であること。

「ハチミツ」は可愛らしいワードがたくさん出てくることでどこかメルヘンの世界へ誘われるような気持ちになりながらも、スピッツらしい恋愛観・人生観を示してもらえる、とても魅力的な曲でした。

ハチミツ

ハチミツ

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