涙がキラリ☆

涙がキラリ☆」は、1995年9月発売の6thアルバム「ハチミツ」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗 編曲:笹路正徳スピッツ

目覚めてすぐのコウモリが 飛びはじめる夕暮れに

バレないように連れ出すから カギはあけておいてよ

君の記憶の片隅に居座ることを 今決めたから

弱気なままのまなざしで 夜が明けるまで見つめているよ

「夕暮れ」を「夜行性のコウモリが目覚めて飛びはじめる頃」と情緒豊かに装飾していて、この曲は始まりからとても印象的で惹きつけられます。

ここで夏を表すコウモリという言葉を出すことで、今が夏であることがわかるようになっています。

コウモリは諺にもあるように「情けない人」を表すこともあるので、もしかしたら自分と重ね合わせているのかもしれません。

「今決めた」と「目覚めてすぐ」、それから「弱気」はそういった意味を含ませているのかも。

日中ずっとくよくよと悩んでいて、夕暮れになってようやく目覚めて飛びはじめたと読んでも面白い解釈になるかと思います。

さて、何に対してか、バレないように君を連れ出そうとしています。

弱気なためになかなか行動できず、けれど、夕暮れが迫ろうという時になってようやく「君の記憶の片隅に居座ることを今決めた」ので、そのために連れ出すから「カギはあけておいてよ」と呼び掛けています。

このカギは、ドアや窓の鍵とも読めますし、心の鍵を開けて準備していてね、という意味にも取れますね。

夜が明けるまで、つまり、新しく何かものごとが始まってしまうまで、夕暮れから夜明けまで、つまり、それまでの二人に残された全ての時間を、君の記憶に残るものにしようとしているようです。

それでもまだ心の中は弱気なままというので、かなり思い切った行動のように思えます。

同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら

星を待っている二人 せつなさにキュッとなる

心と心をつないでる かすかな光

この想いは一方的なものではなく、二人共通の想いであることが「同じ涙」からわかります。

自分が天使であればずっとそばにいて君を守ることが出来るのですが、そうではないのでそれはかないません。

それで、同じ気持ちからこぼれた涙がキラリと光るように、夜空に星が輝き出すのを待っています。

星の光は小さくかすかなものでありますが、二人で同じ場所にあるものを見ることから、強く二人の心をつなぎます。

なぜなら、将来、例え普段は忘れていたとしても、星空を見上げればきっとまたその時の記憶がよみがえるからです。

つまり、物理的にそばにいることはかなわなくても、星がある限り記憶のどこかに永遠に居続けられるのです。

そう考えて、君と一緒に同じ星を最後に見ることを決めたのでした。

「せつなさにキュッとなる」という歌詞の通り、胸が締め付けられるようなせつない気持ちですね。

浴衣の袖のあたりから 漂う夏の景色

浮かんで消えるガイコツが 鳴らすよ恋のリズム

映し出された思い出は みな幻に変わってくのに

何も知らないこの惑星は 世界をのせて まわっているよ 

「浴衣の袖のあたりから漂う」という夏の装飾表現も素晴らしいですね。

君の浴衣姿に、恋心からドキドキと胸が激しくリズムを打ちました。

しかし、それは「ガイコツ」が鳴らしたリズムでした。

日本においてガイコツには「無常」の理を示すという意味があり、「浮かんで消える」と表現されていることからもそう読んで良いでしょう。

つまり、どんなにその時に激しく胸が高鳴ったとしても、それはいつかは儚く消えてしまうものなのです。

今はすぐに頭の中に映し出される君とのそういった思い出も全て、いつかは幻となります。

時間が止まってしまえば幻になることもないのに、非情にもこの世界を乗せた地球はまわり続け、そのために時は進み、そして、思い出は幻となり儚く消えていきます。

だからこそ、消えてしまわないように、世界のどこにいても見られる、夜空にいつまでも存在し続ける星を二人の記憶を呼び覚ますきっかけにすることにしたのですね。

同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら

本当はちょっと触りたい 南風やってこい

二度と戻らない この時を 焼き付ける

先ほどは、見つめるだけと言っていたけれど、本当はちょっと触りたい、という願望がのぞきます。

身体が触れ合うということは、人間にとって、特に想い合う関係ならばとても大切なことです。

それは無視することは出来ませんから、この気持ちはとても真摯なものだと感じます。

けれど、やはり弱気なのですぐには行動できず、南風が吹くなど何かきっかけを待っています。

南風も夏を表す言葉で、ここでも今が夏であることを表しています。

今ここにある時というのは永遠に同じく続くように思えますが、それは誤解で、本当は一瞬ごとに時間は進んでいて、それは無常につながっています。

しかし、今この瞬間は確かにここにあります。

とても大切な瞬間で、そして、すぐに去って二度と戻らないもの。

それを知ったので、この瞬間を大切に記憶に焼き付けるのだと、弱気な思いは断ち切り、南風を味方につけて、思いきって君を抱きしめます。

ここで抱きしめられた記憶も、君が夜空を見る度に思い出されることでしょう。

弱気なためなかなか決断も行動もできませんでしたが、最後には君を抱きしめて、その記憶をも残すことが出来ました。

同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら

星を待っている二人 せつなさにキュッとなる

心と心をつないでる かすかな光

涙がこぼれていること、それから自分は天使でないという表現から、どうやら二人は離れ離れにならないといけないようなのですがなぜでしょうか。それに、どうして、バレないようにするのでしょうか。

様々な解釈が出来ると思います。

私はこれはまだとても純粋な頃のとても小さなひと夏の恋で、女の子が夜に抜け出すことなど許されない年頃のお話なのではないかなと考えたりもしました。

何か事情があって物理的に離れてしまうことで終わってしまう芽生えたばかりの小さな恋。

それを必死に記憶の中に残そうとしている気持ちが痛いほど伝わり、胸が打たれるように感じました。

一人称を「俺」としているところに自分を大きく見せようとしている思いがして、それと歌詞の内容とのアンバランスさにも非常な若さを感じます。

タイトルの「涙がキラリ☆」の「☆」にもきちんと意味がありました。

スピッツの曲のタイトルには意味がそれほどないとご本人も話されたりしますが、少なくともこの曲に関してはかなり熟考してつけられているように思いますし、他の曲も実はそうなのではないかなと私は考えています。

「ハチミツ」に歌われた行動することの大切さが、この「涙がキラリ☆」でもテーマの一つとなっていました。

そのままにしてしまえば何も残らなかったかもしれない小さな恋を、君の中にどうにかして残そうと弱気から抜けて勇気を出して行動したことは、今後の彼にとってきっと大きな意味を持つことになるだろうと感じています。

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