歩き出せ、クローバー

「歩き出せ、クローバー」は1995年9月発売の6thアルバム「ハチミツ」に収録されました。

作詞・作曲:草野正宗 編曲:笹路正徳スピッツ

未知のページ 塗りかえられるストーリー 風に向かい

歩き出せ 若くて青いクローバー 裸足のままで

過ぎた恋のイメージに近いマーク 指で描き

流れ出す 自由で激しいメロディ 一人きりで

戦闘機よりも あからさまな

君の声 優しいエナジー

クローバーの葉は、幸運の象徴でもありますし、衝撃に対しての耐久性があり、年間を通して茂る、とても生命力の強い植物です。

若くて青い未来ある若者に対して「クローバー」と呼び掛けることは、彼らにその強さと運が備わっていることを教示しているのでしょう。

これから人生という物語を進むにあたり、彼らのそれは未知の可能性に満ちていて、ページごとに自分で塗りかえていくことが可能です。

筋書通りに進むのではなく、風に向かって裸足のままで、抵抗を避けずに身を守るための靴を履くことなく多少のリスクは顧みず、自分のページは自分で塗りかえていくように、と激しています。

過去の恋愛を思う時、まず感じられるのは、具体的な事象よりも当時の自分の感情ということは多くあるように思います。

その感情によるイメージを指先で空に描いてみると、二人でいた頃の、あの自由で激しい気持ちが、まるでメロディが流れ出すようによみがえってきます。

今は一人きりであるのに、メロディに乗って思い出される君の声によって、あの頃と同じように力強いエネルギーが自分を満たします。

それは、戦闘機のような武力ではない、しかしそれ以上の力強さを与えてくれる愛の優しさに満ちたエネルギーです。

歩き出せクローバー とまらないクローバー

熱い投げキッス 受け止める空

そのエネルギーをもって人生を止まらずに歩め、と若者に呼び掛けます。

泣きながら笑い出し「嬉しい!」と何度も叫び

寝ころがって眺めた 君のカード 胸にあてる

入道雲から 伝えている

そのままで 優しいエナジー

泣きながら笑い出す時ってどんな時でしょう、心配の後の安堵ということが多いでしょうか。

君からカードが届き、緊張していた心が解きほぐされることで涙がこぼれ、「嬉しい!」と何度も叫び、そして笑い出してしまうほどに安堵しています。

じっとしていられずに寝転がっていつまでもそれを眺め、大切に胸に抱き締めます。

何が書かれていたのかよりも、君が連絡をくれたこと、無事に過ごしていること、そんなことがまず嬉しかったのだろうと思います。

過ぎ去った恋だとしても君は今でもとても大切な存在で、自分の欲よりも、連絡をくれたということは君が自分とのことによって傷つかずにいてくれるだろうこと、そして、元気でいると知れたことが何よりも歓びとなったのでしょう。

二人が当時どんな関係で、どんな風に終わったのか、そして、自分が今どんな風に感じているのか、この「嬉しい!」からすべてが伝ってくるようです。

空を見上げれば、夏の空に入道雲が沸いています。

君と過ごした夏があれば、あの頃二人で見た入道雲が思い出され、そして、今も同じ空の下、どこかに君がいることが思われます。

君が存在している、ただそう感じるだけで、愛による優しいエネルギーが自分にみなぎってきます。

だんだん解かってきたのさ

見えない場所で作られた波に

削り取られていく命が

混沌の色に憧れ 完全に違う形で

消えかけた獣の道を 歩いて行く

まだ若くても、ある程度人生を経験するうちに、この整然と決められたルートを進むことは自分の本来に反するため、まるで自分とは無関係のところで作られた波に命を削られるような状態になる、ということがだんだんと理解されてきました。

ある人にとってはそういった人生も良いのでしょうが、自分としては混沌とした、まだ何もかもが混ざり合って何も決まっていなかった頃に憧れを抱きます。

誰かによって整然と整備された道を行くのではなく、世の常識と完全に違ったとしても、混沌としたところから自分自身で道を切り開いていきたい。

世界が混沌状態にあった頃の、今は消えかけてしまった獣道を自分は歩いて行こう。

そんな風に考えています。

君の声 優しいエナジー

その時に、大きな力となるのが、過ぎ去った恋の相手である君の存在です。

人生は争いではなく、愛による優しいエネルギーをもって切り開いていけるのです。

歩き出せクローバー、止まらないクローバー

熱い投げキッス 受け止める空

険しい道をとまらずに歩んでいく力を与えてくれる君に、直接伝えることは出来なくても、熱い想いを空に投げれば、それを空が受け止め、そして、どこか同じ空の下にいる君の元まで届けてくれるでしょう。

この曲の、クローバーのようなたくましい生命力を持った若く未熟な若者に対して、自らの人生を力強く歩んで行って欲しい、そんな呼びかけは、もしかしたら、若い頃の自分に宛てたものなのかもしれません。

そして、「ハチミツ」のテーマの一つである

  • 素晴らしい恋人の存在によって心が解放され、自信を持つことができる

がこの曲でも表現されていました。

素敵な恋人は、例え離れ離れになっても、当時と同じ力を与え続けてくれます。

そうなるためには、恋愛中はもちろん、その後にも続けてお互いを大切に想い合う気持ちをいかに育てられるか、それが肝要だということをこの曲は教えてくれるように思いました。

最後に、同じ空の下、や、記憶に留まるといったところ、まるで「涙がキラリ☆」の続きの物語ようだなと私には感じられました。

歩き出せ、クローバー

歩き出せ、クローバー

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